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新鮮さと安全を届けるために進化する物流
「食育講座 食を取り巻く環境 5 (全6回)」

 大型小売店が台頭してきたことで、食に限らず消費者をとりまくマーケット環境は大きな変化をとげました。小売店舗が導入したPOSシステムは、販売時点で何がどれだけ売れたかがわかります。これにより単品管理(注)が容易となり、死に筋商品の早期発見が可能となりました。また、POSデータをもとに、品揃え、在庫管理、発注、販売政策、価格政策などの意思決定に役立てることができます。
この結果、消費者の動向とも言える販売情報を持つ小売店のマーケットにおける力が強くなり、これまでの価格の決定や商品供給がメーカー主導であったものから、小売店主導に変化してきました。

■マーケットは消費者主導型へ

 これまでのメーカーが卸段階、小売段階、販売価格まで決めていたメーカ主導の「建値(たてね)」と呼ばれる制度から、小売の段階で、実勢価格(実際に店頭で販売されているマーケット価格)にあわせて商品の販売価格を自由に設定できるオープンプライス制度が導入されるようになりました。
消費者にとっては、定価が決まっていてそこから何%引きというほうがわかりやすい気がしますが、常に20%引きとか30%引きというのをみると、どれが本来の価格なのかがわかりません。
オープンプライスであれば実勢価格の比較ができます。
また、メーカーにとっても、常に30%引きとされることでブランド力の低下を招く可能性があり、オープンプライスにすることで、ブランド力の維持が可能となります。

 しかし、メーカーが卸や小売、市場での販売価格を決めることができる商品も残っています。 独占禁止法はもともと価格競争を生み出すことで談合価格や一律価格を排除するための法律です。しかし、一部の商品に関しては、再販売価格維持制度(再販制度)として定価販売(販売価格を決める)を認めています。
これが認められているのは、新聞・雑誌・書籍・音楽CD・音楽テープ・レコードで、著作権保護に関連する商品です。

 このように、消費者のニーズを小売店側が数字として適確につかむことで、卸売りやメーカーに対する小売店の影響力が強まるようになりました。

注:単品管理・・売り場において商品を階層的に分類した場合、最小の単位を「単品」といいます。この単品ごとに商品の受発注在庫管理をすることです。この管理の単位をSKUと呼びます。(Stock keeping unit)
☆店舗における商品の分類(青果物の場合)
大分類 部門        生鮮部門、生鮮売り場
中分類 ライン、コーナー 青果コーナー
小分類 カテゴリー     果実
細分類 アイテム、単品 リンゴ、バナナ

■消費者起点型の物流
 物流は、生産者から消費者へ生産物を移動させるシステムのことです。これまでのわが国における物流は、「生産物をいかに安く、早く、安全に運ぶか」ということが中心のシステムでした。
卸売業などでは、顧客への営業活動を合理的に行うために、支店や営業所を設置し、そこに併設する形で倉庫を作り、注文に応じてそこから出荷するという物流形態が一般的でした。企業にとっての物流はコスト(費用)でしたので、いかにしてコストを節減するかということに主眼が置かれていました。
 私たちが、引越しをする際に、引越し業者数社から見積もりを取り、もっともサービス内容が良く、しかも料金が安いところに決めるというようなスタイルです。

 物流は、これまでの「生産したから保管する」「注文があったので出荷する」という、いわば商品を供給する側つまり「メーカー主導」の形態から、「売れるものを売れるときに売れる数だけ納品する」という消費者の消費行動に対応した「消費者起点型」の形態に変わってきています。
 これまでの物流スタイルはというと、大口貨物を決められた路線で運ぶというスタイルが主流でした。それが、共同配送、宅配便、多頻度小口配送、複合輸送(注)など消費者のニーズに合わせたまさに消費者起点の物流形態が生まれてきました。
注:
共同配送・・・異なる荷主が荷物を混載して顧客のところまで運ぶこと
宅配便・・・小口の貨物を荷主の戸口から顧客の戸口まで迅速に運ぶサービスのこと
多頻度小口配送・・・必要なものを必要な数を必要な時に運ぶ形態
複合輸送・・・輸送するにあたり、二つ以上の輸送手段(鉄道、車両、船舶、航空機など)を利用すること


■温度帯物流
 生鮮食品の鮮度を保ったまま消費者に届ける、デザートや惣菜類、牛乳などあまり日持ちしないものを輸送する。アイスクリームや冷凍食品を輸送するなど、温度帯を管理した物流が一般的になっています。
保冷や冷凍の設備をもった輸送手段により商品の品質や鮮度を保ちます。
温度帯はおおむねつぎのように分かれます。
常温 温度管理の必要がないもの 一般雑貨、日用品など
冷蔵 クール 10?20℃        弁当、パンなど
チルド 5℃??5℃ デザート、牛乳、惣菜類など
冷凍 フローズン ?10℃以下 アイスクリーム、冷凍食品

注:記載した温度帯はあくまで目安であり、クール、チルド、フローズンのそれぞれどの温度帯となるかといった定義はなく、業界や企業によって異なる場合があります。

 この温度帯管理は、輸送手段だけでなく製造者、倉庫、店舗においても管理されます。このように生産されてから消費者の手に渡るまで、温度帯管理がなされているものをコールドチェーンといいます。

■多頻度小口物流
 高度経済成長の時代には、大量生産・大量消費が行われていました。そのため、豊富な在庫を抱えて、販売の機会ロス(チャンスロス)が起きないようにすることが重視されていました。在庫のコストよりも、売りたくても売るものがないという状態を作らないようにすることに重きが置かれていました。
そして、その後この在庫に対する考え方が大きく変わりました。
これは、消費者ニーズが多様化したためです。この結果、製品のライフサイクルが短くなり、同時に製品も多種多様なものが生産されるようになりました。
消費者のニーズにきめ細かく応えるためには、欠品はさせないようにしながらも、柔軟に対応できる品揃えが必要となりました。
つまり、欲しいものを欲しい時に欲しい数だけ入手するという形に変化しました。この必要なものを必要な時に必要な数だけ配送することを「JIT(ジット)物流」(Just in time:ジャスト・イン・タイム物流)といいます。これは多頻度小口物流のことでもあります。
トヨタ自動車が生産管理システムとして導入したしくみがこのJIT物流で、「かんばん方式」と呼ばれます。
これが、一般の流通でも導入されその代表格がコンビニエンスストアです。POS(販売時点情報管理)システムによって、売上げ情報・在庫情報をつかみ、在庫状況にあわせて必要な商品を必要な時に必要な量だけ発注するようになりました。
この多頻度小口物流は、消費者のニーズに対応するために導入されたといってもいいでしょう。
多頻度小口物流の問題点もあります。物流コストが増大すること、納入業者に在庫が押し付けられる、交通渋滞の原因となるなどがあげられます。

この多頻度小口物流は、消費者の「少しでも新鮮なものが欲しい、新製品が欲しい、あれも欲しいこれも欲しい」というニーズ(わがまま)から生まれているともいえます。

■ロジスティックスからSCMへ
 ロジスティックスとは軍事用語から来ている言葉で、日本語では兵站と訳されています。この兵站とは、兵員や補給物資を最前線までいかに効率よく輸送するかというものです。このロジスティックスが勝敗を決するとまでいわれます。
 ビジネスの世界では、製品の企画開発から原材料の調達・生産・販売・廃棄物の回収・リサイクルと生産者から消費者そしてリサイクル業者にいたるまでの物の流れの中で、「物の動き」に注目し、それらを効率的なシステムとして構築していこうという考え方を「ロジスティックス」といいます。これまでの単に物を輸送する・保管するといった「物流」とは大きく変化しています。

 このロジスティックスにITを取り入れ、自社だけでなく取引先との間の受発注、資材の調達から在庫管理、製品の配送まで、事業活動の川上から川下までを総合的に管理することで余分な在庫などを削減し、コストを引き下げることをSCM(Supply Chain Management:サプライチェーンマネージメント)といいます。
 コストの引き下げとは相反するQR(Quick response:クイックレスポンス)注1を実現するためどう最適化していくか、リードタイム注2の短縮をどうするかということも同時にこのSCMの目的でもあります。

注1 QRとは、消費者のニーズに応えるため、製品の生産から販売までのサイクルを短縮し、短時間でのお届けを実現し、さらに在庫回転率を高めるための手法のことです。また、顧客の要望にすばやく対応することもQRと呼んでいます。
注2 リードタイムとは、発注してから製品が手元に届くまでの時間をいいます。


次回は「卸売りの機能と小売の形態」です。

(牟田実の食育講座16)


2007.07.17 07:45:15 | きゃりあ塾 | コメント (0) | トラックバック (0)

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