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「食育」の限界
 「今月、発売された食育の本の中に、『キレやすくなるのは、バランスの悪い食生活で、ビタミン、カルシウムなどの栄養素が不足するからです』と書かれているのですが本当にそうですか」

 このようなコメントを読者の方からいただきました。

 「キレやすくなるのは、食生活が原因」よく言われることです。
また、そう言われるとなんとなく納得してしまいます。
しかし、説得力がない。それはなぜか。
その理由は、それを証明する根拠が不明確だからです。
 同じように、「食事のバランスが大切」。これも何となくわかったような気がします。
しかし、「食事のバランスが大切」というのは、「偏らずまんべんなく食べましょう」ということを言いたいのだと思いますが、この「バランス」・「偏らず」・「まんべんなく」といった言葉は、きわめて定性的(抽象的、概念的)すぎているためにわかったようでよくわかりません。

 さて、「キレやすさ」の話にもどります。ビタミンやカルシウムなどの栄養素が不足すると、確かにキレやすくなる可能性はあるかもしれません。
しかし、不足している人がすべてキレやすくなるかというとそうでもない。
逆に、ビタミン、ミネラルが足りていて、食生活もしっかりしているのに、キレやすい人もいるかもしれない。
栄養素の摂取と人間の行動についての研究論文を調べましたが、残念ながら見つかりませんでした。栄養素が体内でどのような働きをするかについての論文はたくさんあります。
薬の場合でも、動物実験をして治験をしてその薬の影響を検証している論文はたくさんありますが、行動との因果関係に関しては、極めて慎重です。
たとえば、タミフルが異常行動ととるという因果関係はまだ研究段階で、可能性として語られていますが、断言はされていません。

さらに、「キレる」とはどのような状態をいうのでしょうか?この定義もあいまいです。
私自身も、ムッとしたり、我慢できないということもあります。これもキレるにはいるのでしょうか?
また、そのとき私自身で極端にビタミンやミネラルが不足しているとは思えません。

  今回問題と思うのは、あまりに安易に「食生活が原因」と言いきる姿勢です。
子どもの話をしっかり聞いてあげればキレなかったかもしれないのに、親は食生活が原因といわれることが、食生活をしっかりしなければと強迫観念となる。まして、専門家と呼ばれる管理栄養士や食育関係者が発言すると一層その気持ちが強くなります。
それでは、食育も逆効果です。

 栄養士や料理の専門家が、高血圧症を緩和する料理、がんをなくす(予防する)食事、冷え性に効く食事というような指導をしているものを見かけます。iインターネット上でレシピを紹介したりコメントしたり、講習会を開いたりもしているのをみかけます。実は、これも極めて危険なものだと思います。
もし、加工食品に、この商品(あるいはこの食品に含まれる栄養素)でがんをなくします、高血圧症を緩和します、冷え性がなくなりますと表示すると、明らかに薬事法違反となります。

 どうも「食育」は根拠があいまいなことで語られがちで、そのためなんとなくストンと落ちないということがあるのではないでしょうか。

今回の読者の方もストンと落ちないからコメントをしてきたのだと思われます。

そこに「食育の限界」を感じます。


2008.03.21 08:31:46 | 食彩人 | コメント (0) | トラックバック (0)

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